2. ゴムの種類と性質
天然ゴムから始まった合成ゴムは、高分子化学の発達と共に種類を増やし一大合成ゴム工業を発達させ た。その種類は数え切れないほど多いが、基本となる構成物質は限られている。ここではそれらの概略を 述べる。
1.天然ゴム(NR)
2.イソプレン ゴム(IR)
3.スチレンブタジエン ゴム(SBR)
4.ブタジエン ゴム(BR)
5.クロロプレン ゴム(CR)
6.ニトリル ゴム(NBR)
7.ブチル ゴム(IIR)
8.エチレンプロピレン ゴム(EPDM)
9.ウレタン ゴム(AU,EU)
10.シリコン ゴム(VMQ、FVMQ)
11.アクリル ゴム(ACM)
12.クロルスルホン化ポリエチレン ゴム(CSM)
13.フッ素ゴム(FKM,FEPM、FFKM)
14.水素化ニトリル ゴム(HNBR)
15.エピクロルヒドリン ゴム(CO,ECO)
16.多硫化ゴム

  1. 天然ゴム(NR)
1493年コロンブスが航海の途中で、ゴムボールに出会ってから、346年後(1839 年)グッドイヤーが加硫法を発明する。それからさらに40年後、ガソリン自動車 が発明され、そのタイヤに利用されて使用量が拡大していく。天然ゴムの供給地 はタイ、インドネシア、マレーシアであり、世界の70%を占めており、日本は輸 入量の70%はタイからである。ゴムの木はトウダイグサ科のパラゴムノキ (Heven brasiliensis)がほとんどであり、すべて栽培されている。その寿命は20年とされている。乾 期や落葉期には産出量が減少し、価格が上がる。生産量の調節はできず、価格が変動しても生産量は変 わらない。樹液の化学成分はイソプレンの重合体であり、炭素と水素のみから構成されている。弾性や耐 摩耗性など物理的強度が大きく、タイヤ、ベルト、ホースなどに使用される。反面、耐熱性、圧縮永久 歪み、耐油性が悪く、シールパッキンなどには使用しない。 

  2. イソプレン ゴム(IR)

天然ゴムと同じものを作りたいという願いが達成されたのは1954年であ
り、最初の合成ゴム(BRが出現してからから30年を経過している。
グッドリッチがイソプレンモノマーから高シス-1、4-ポリイソプレンを合
成したのが始まりである。 石油ナフサから得られるイソプレンを高分子
にしたもので、当然天然ゴムと同じ化学構造をもつものである。
しかし全く同じではない。天然ゴムにはポリイソプレン以外の物質が数%含まれており、それが違いを
生み出しているようである。合成ゴムであるから純粋であり、色が透明で白色製品に用いられるが、他
のゴムとブレンドしての用途が多い。性質も、用途もほぼ同じである。

  3. スチレンブタジエン ゴム(SBR)

名前の通りスチレンとブタジエンの共重合体である。天然ゴム
の代替として開発され最も多量に生産されている合成ゴムで
ある。炭素と水素から構成されているのはIRと同じである。
特性は天然ゴムに似ていて、鉱油に耐性はないが、植物油に対
する抵抗がある。天然ゴムよりは反発弾性が少なく、また引き
裂き強さも小さい。用途もNR,IRと同じである。 

 4. ブタジエンゴム ゴム(BR)

1922年頃から最初に作られた合成ゴムでありブタジエン
のみの共重合体である。重合の形態にはビニル型、シ
ス型、トランス型の構造異性体があるが、製法によって
これら 3 種の構成割合が異なり、その割合により性能
も異なる。シス型が、90%以上のものが合成ゴムとして
使用される。(ビニル型が60%程度になると、塗膜や、
包装用フィルムに使用)。代表的な汎用ゴムであり、耐
摩耗性、反発弾性、耐老化性、低温特性などに優れ、透
明性も良い。反面耐油性は良くない。反発弾性の大きいのを利用して卓球のラケットに使用されて
いる。タイヤのトレッド、サイドウォール、ベルト、ホース、その他工業製品に使用されている。

  5. クロロプレン ゴム(CR)

ネオプレンという商品名で有名な合成ゴムである。(1931年デュポン社か
らデュプレンの名で発売されたが、1937年ネオプレンに改名)。塩素原子
を含むため、難燃性はあるが、比重は大きい。低温時に結晶化しやすいと
いう欠点がある。しかし性能にバランスがとれており、使用実績も長く特
殊ゴムの中での汎用ゴムといえる。接着剤としても利用される。自動車用
部品、一般工業用品、接着剤、建築用、電線などに使用されるゴムである。

   6. ニトリル ゴム(NBR)

ブタジエンとアクリロニトリルの共重合体であり、アクリ
ロニトリルの含量によってゴムの性能が決まる。
ブタジエンが多いと耐寒性が向上し、アクリロニトリルが
多いと耐熱性や耐油性が向上する。圧縮永久歪み、引張り
強さ、耐摩耗性、耐油性が良いため、シール材には欠かせ
ないゴムである。近年塩化ビニール製手袋が環境問題(可塑剤のフタル酸ジエチルヘキシル)で使用
が規制されたため、炊事用、作業用手袋等にこのニトリル ゴムが使われている。自動車用部品、
Oリング、オイルシール、各種シール材などに使用。

   7. ブチル ゴム(IIR)

イソプレンと少量のイソブチレンの共重合体である。
二重結合が少なく、このことが特徴でもありまた欠点で
もある。この不飽和度が低いために加硫速度が遅く、他
のゴムとの混合使用が困難である。耐熱、耐寒、耐候性
に優れ、油、水、薬品にも強い。反面、圧縮永久ひずみ
が悪く、弾性も劣り、鉱油に対する耐性がない。
特にガス透過性が低いことで、タイヤのインナーチューブに、また電気特性が良いため電線被覆に使
用される。その他粘着性があるため建築用シールテープに、振動減衰が速い(反発弾性が低い)ため
に各種防振材、衝撃緩衝材に使用される。

 8. エチレンプロピレン ゴム(EPDM)

エチレンとプロピレンの共重合体に少量の第三成分(CSM)を含
む三元重合体である。二重結合が少ないことはブチル ゴムに
似ている。ゴムの中で最も軽いゴムであり、近年生産量の増加
しているゴムである。耐候性、耐寒性、耐溶剤性、耐薬品性に
優れており、自動車用、工業用、建築用、など用途は広い。
ただ鉱油に対しては全く耐性がないゴムである。耐水性、耐蒸
気性にも優れているので家庭用給水、給湯器に多く使用される。

   9. ウレタン ゴム(AU、EU)

ウレタン ゴムは非常に多くの種類があるが、活性水素をも
つポリオール(ポリエステル、ポリエーテル)(R-OH)とイ
ソシアネート(R-N=C=O)を反応させて作られる、ウレタン
結合(-NH・CO・O-)を持つ高分子化合物である。 
分子構造による分類
 1. ポリエーテルタイプ(EU)はポリ(オキシプロピレン)
  グリコール(PPG)やポリ(オキシテトラメチレン)
  グリコール(PTMG)など二官能ポリエーテルとジイ
  ソシアネートを反応させて作られる。特徴は軟質から硬
  質まで幅広いゴム製品が得られ、機械的性能、耐熱老
  化性、耐磨耗性、耐化学薬品性などに優れるが、耐熱水
  性に劣る。ポリエステル系に比べ、耐寒性やゴム弾性に
  優れるが、機械的強度に劣る。加水分解は起さない。 
 2. ポリエステルタイプ (AU)
  これはアジピン酸と多価アルコールの重縮合によって得られるアジペート等とジイソシアネートの
  重付加反応で作る。特徴は機械的強度が高く、広範囲の物性を持つ製品が得られる。
  ポリエーテル系と比較して機械的強度は高いが、耐寒性は悪い。他の性質はポリエーテルと類似し
  ている。このタイプは加水分解を生じるが、ウレタン結合自身が加水分解するのではなく、ポリオ
  ール(R′)のエステル結合が水と反応してアルコールと酸に分解されることによる。

成型法による分類(三種)
1. 液状の原料を使用する注型タイプ、
2. 一般のゴムと同じ混練(ミラブル)タイプ、
3. 射出成形(インジェクション)タイプ
  一般的に、ウレタン ゴムは他のゴムに比べて強度が大きく、耐摩耗性、耐油性、耐オゾン性が優れ
ているが、耐熱性に乏しく、また、ポリエステルタイプは酸、アルカリ、熱水、水蒸気などの加水分
 解に弱い。用途としては、低速運搬用タイヤ、その他耐摩耗性、耐油性、耐オゾン性を必要とする
 工業用ゴム製品に用いられる。

  10 . シリコン ゴム(VMQ,FVMQ)

  シリコン ゴムにはポリシロキサンにメチル基が結合した
メチルシリコン ゴム(VMQ)と、フルオロアルキル基が結
合したフルオロシリコン ゴム(FVMQ)がある。実際は VMQ
が多く使用されており、それが代表となっている。
高度の耐熱性、耐寒性、耐オゾン性を持ち、電気特性や非
粘着性にも優れている。自動車関連に使用される。
生理的にも安全であるから医療関連機器、食品関連機器に
も多く使用される。機械的強度(引張り強さ、耐摩耗性、
引き裂き強さなど)に弱いのが欠点であり、運動用シール
パッキンには使われない。そのほかガス透過性が大きい、熱膨張が大きいなどがあり、また価格も
高い。FVMQは耐油性、そのたに優れ、万能的性格をもっている。シリコン ゴムには、この他に液状で
供給され、常温で硬化(加硫)するRTV(Room Temperature Valcanizable)またはLTV(Low 
Temperature Valcanizable)があり、シーリング剤や、接着、あるいは型取りなどに使用される。

   11. アクリル ゴム(ACM)

アクリル酸エステルを主成分とし、エチレン主鎖に極性の高いエス
テル基の側鎖をもっていることでジエン系ゴム(NR,IR,RBR、BR)
に比べて、優れた耐熱性、耐油性、耐オゾン性を持っており、オイ
ルシール、Oリング、ホース等の自動車部品の用途が増えている。
水やエステル系合成油に膨潤軟化する。これまで機械的強度や耐
寒性、加工性などが悪かったが、徐々に改善され、コストパーフォ
ーマンスも良いため、自動車のメンテナンスフリー化と共に用途を広げている。

  12. クロルスルホン化ポリエチレン ゴム(CSM)

  ハイパロンの商標で有名なゴムである。エチレンに塩素と亜
硫酸ガスを作用させて作る。塩素原子を有しているためクロロ
プレン ゴムと似た性質がある。主鎖に二重結合を持たないた
めに耐候性、耐オゾン性、耐熱性、耐薬品性に優れている。
着色し易く、変色も少ないため建材用、電線、ライニングなど用途は広い。低温特性は悪く、低温で結
晶化し易いゴムである。

   13. フッ素ゴム (FKM,FEPM,FFKM)

  フッ化ビニリデン系(FKM)と次の二つのタイプ
FEPMとFFKM がある。分子式で見るように水素原子が
フッ素原子にどれだけ置き換わっているかだけの違
いである。だが主流はFKMである。フッ素ゴムは優れ
耐熱性、耐油性、耐薬品性により、化学プラント
や半導体関連に幅広く使用されている。多くの項目
は他のゴムより優れているが、リン酸エステル系作
動油、有機酸、ケトンエステル、アミン系薬品等に
は注意が必要である。水素がフッ素にすべて置き換
わっている場合は当然性能はアップするが価格もア
ップする。

     14. 水素化ニトリル ゴム(HNBR)

 ブタジエン(NBR)の二重結合に水
素を結合させ、飽和させる。
水素化率が高くなるほど耐熱性、耐
候性、耐オゾン性などが向上する。
100%近く水素化されたものはアクリ
ルゴムに近い耐熱性を持つように
なる。特に耐冷媒性、耐冷凍機油性が向上するので、エアコンのパッキンやOリングなどに使用される。

    15. エピクロルヒドリン ゴム(CO,ECO)

 プロピレンと塩素からエピクロルヒドリンが作られ、そ
の単独重合体がCOであり、エピクロルヒドリンとエチレ
ンオキサドとの共重合体がECOである。耐熱性、耐油性、
低温特性のバランスが優れ、また耐オゾン性、難燃性が
ある。COの欠点は低温特性や反発弾性であるが、ECOはこ
れを改良したものである。これらはほとんど自動車関係
に使用されるゴムである。

     16. 多硫化ゴム
 1931年にチオコールの商品名で発売された比較的古いゴムである。多硫化アルカリ (Na2S 
X=1〜4.5)と有機二塩化物とを水中で乳化重合して作る。一般の合成ゴムとは全く組成を異にして
おり、40〜80%も硫黄を含んでいる。そのためか悪臭がする。耐油性、耐溶剤性、気体の不透過性に
優れているが、機械的強度、耐熱性、圧縮永久ひずみなどが不足し、シールパッキンなどには使用さ
れない。室温加硫性と耐候性、耐オゾン性などで、建築用弾性シーリング材、道路の目地シールなどに
使用される。